ゴムパッキンや紙ガスケットと併用して漏れを防いだり、単体で使用するよう指示されることもある液状ガスケット(整備士は液体ガスケットと呼ぶことも)。
一口に液状ガスケット(以下液ガス)と言っても、実際には目的や性能によって膨大な種類があります。
今回は、バイクのエンジンに使用できる種類に絞って、それぞれを比較していきます。
液状ガスケットの分類
まずは液ガスがどのように分類されているか、簡単にみておきます。
一番大きな分類としては、「有機溶剤タイプ」「無溶剤タイプ」「水性タイプ」の3つに分けられ、無溶剤タイプの中でも、「シリコン系」と呼ばれる物が、エンジンに一般的に使われます。
シリコン系は空気中の湿気に反応して硬化するのですが、その硬化機構によってさらに下記の3つに分類されます。
硬化機構 | 特徴 |
脱オキシム型 | 各種材料との接着性が良好。 銅・銅合金を腐食させる場合がある。 |
---|---|
脱アセトン型 | 硬化が早く、保存性、作業性、密封耐熱性に優れる。 |
脱アルコール型 | 接着性にやや劣るが、金属やプラスチックに影響がない。 |
シール対象となる液体によっても、数多くの商品が用意されています。
つまり、エンジンオイル、冷却水、ギヤオイル、ガソリンに対する耐薬品性が商品ごとに定められています。
ガソリンは少し特殊で、大抵「耐ガソリン性」と明記された有機溶剤タイプが使用されます。
シール対象ごとの適した液体ガスケット
それでは実際にどういった商品があるのか、モノタロウで入手可能な物を中心に紹介していきます。
価格は投稿日時点でのモノタロウでの価格で、品番にはモノタロウへのリンクを貼っています。
エンジンオイルと冷却水に耐性がある商品
全てシリコン系無溶剤タイプです。
メーカー | 品番 | 内容量 (g) | 税抜価格 [100g当たり] (円) | 色 | 反応形態 | 見掛け粘度 (Pa・s) | 取り外し性 | 特徴 |
モノタロウ | MG103 | 150 | 2,690 [1,793] | 黒 | 脱オキシム | – | – | 肉盛性○ |
スリーボンド | 1207B | 100 | 2,290 [2,290] | 黒 | 脱アセトン | 100 | × | 速乾、肉盛性○ |
スリーボンド | 1207C | 150 | 3,990 [2,660] | 赤褐色 | 脱アセトン | 70 | ◎ | 速乾、肉盛性○ |
スリーボンド | 1207D | 150 | 4,090 [2,727] | アルミ | 脱アセトン | 70 | ◎ | ↑1207Cの色違い、速乾、肉盛性○ |
スリーボンド | 1207F | 150 | 3,790 [2,526] | アルミ | 脱アセトン | 180 | ○ | 高粘度 |
スリーボンド | 1217F | – | – [-] | 灰 | 脱オキシム | 210 | ◎ | 高粘度 |
パーマテックス | 97380 ウルトラグレー | 99 | 2,190 [2,212] | 灰 | – | – | – | 肉盛性○ |
コスパに優れるのはモノタロウですね。
1207Bはトヨタ系、1207Cは日産系によく使用されるらしいです。
エンジンオイルとギヤオイルに耐性がある商品
全てシリコン系無溶剤タイプです。
メーカー | 品番 | 内容量 (g) | 税抜価格 [100g当たり] (円) | 色 | 反応形態 | 見掛け粘度 (Pa・s) | 取り外し性 | 特徴 |
スリーボンド | 1215 | 250 | 1,990 [796] | 灰 | 脱オキシム | 20 | ○ | 低粘度 |
スリーボンド | 1216 | 120 | 3,790 [3,158] | 灰 | 脱オキシム | 120 | ○ | – |
冷却水が関係ない場所なら、1215が最もコスパが高く汎用性がありそう。
エンジンオイルのみに耐性がある商品
全てシリコン系無溶剤タイプです。
メーカー | 品番 | 内容量 (g) | 税抜価格 [100g当たり] (円) | 色 | 反応形態 | 見掛け粘度 (Pa・s) | 取り外し性 | 特徴 |
スリーボンド | 1211 | 100 | 1,790 [1,790] | 白 | 脱オキシム | – | ○ | 低粘度 |
スリーボンド | 1211F | 100 | – [-] | 透明 | 脱オキシム | – | ○ | ↑1211の色違い、低粘度 |
スリーボンド | 1212 | 100 | 1,790 [1,790] | 白 | 脱オキシム | 100 | ○ | ↑1211の高粘度タイプ |
ガソリンに耐性がある商品
メーカー | 品番 | 内容量 (g) | 税抜価格 [100g当たり] (円) | 色 | 硬化形態 | 粘度 (Pa・s) | 取り外し性 | 特徴 |
スリーボンド | 1102 | 200 | 1,790 [895] | 黃 | 不乾性 | 7.0 | × | 耐油性○ |
スリーボンド | 1119 | – | – [-] | 黒・白 | 二液混合 (脱アルコール) | 150・260 | ○ | ゴム状に硬化、耐油性○ |
スリーボンド | 1184 | 200 | 1,990 [995] | 灰 | 溶剤揮発 | 9.5 | ○ | ゴム状に硬化、耐油性○ |
パーマテックス | 97378 | 59ml | 2,390 | 青 | 不乾性 | – | ○ | 低粘度、オイル・冷却水にも○ |
パーマテックス | 97374 モトシール1 | 80 | 2,390 [2,988] | 灰 | – | – | – | オイル・冷却水にも○ |
スリーボンド製は量が多いのですが、クランクケースなどと違って使用頻度も量も少ないので、デイトナやキジマから販売されている数gのチューブがいいかもしれません。
ちなみに2ストローク車はクランクケースで混合気の一次圧縮を行うので、クランクケース合わせ面には、耐ガソリン性の液ガスを使いましょう。
耐熱性が高い商品
メーカー | 品番 | 内容量 (g) | 税抜価格 [100g当たり] (円) | 色 | 硬化形態 | 耐熱温度 (℃) | 粘度 (Pa・s) | 取り外し性 | 特徴 |
スリーボンド | 1107D | – | – [-] | 灰 | 不乾性 | 400 | 25.0 | ○ | – |
スリーボンド | 1109J | – | – [-] | 灰 | 溶剤揮発 | 400 | ペースト | × | – |
パーマテックス | PTX81878 ウルトラカッパー | 85 | 1,890 [2,224] | 橙 | – | 371 | – | – | 速乾 |
「ウルトラカッパー」は、人気で入手性も良好です。
まとめ
用途別に何種類も揃えるのは、サンメカには少しハードルが高いですよね。
ここまで紹介した中で「これ持っとけば大丈夫!」と個人的に思うのは、スリーボンド製の「1215」です。
何と言っても250g入って約2,000円というコスパが魅力!
冷却水への耐性はありませんが、ウォーターポンプを脱着する時は普通紙ガスケットを新品にするので用途としては十分だと思います。
耐ガソリンと耐熱は特殊用途なので、少量の専用品を用意しておけばよさそう。
今回はスリーボンド製を中心に一部を紹介しました。
それでもこれだけ種類があるので奥が深いですよね~。
サービスマニュアルでは、スリーボンド製の品番が指示されていることが多いので、その時は「どれでも一緒だろう」と思わず、できるだけ指示通りの液ガスを使用することをおすすめします!